【過払い金】退職金の損金算入を争う

上記
関係
被告

○主文

一原告の請求をいずれも棄却する。
二訴訟費用は原告の負担とする。

○事実

第一当事者の求めた裁判

一請求の趣旨
1被告が、原告の平成元年四月一日から平成二年三月三一日までの事業年度の法人税について、平成二年一二月二五日付でした更正のうち所得金額七八五万六九六九円、納付すべき税額二二四万三九〇〇円を各超える部分及び過少申告加算税の賦課決定を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
二請求の趣旨に対する答弁
主文同旨。

第二当事者の主張

一請求原因
1原告は、肩書地において木材の卸売業を営も株式会社であり、同族会社である。
2(一)原告は、平成元年四月一日から平成二年三月三一日までの事業年度分の法人税につき、平成二年五月三一日、所得金額七五七万五三六九円、納付すべき税額二一六万二四〇〇円と確定申告をしたが、その後、平成元年一〇月二日に死亡した原告取締役Aに対する退職金三五〇〇万円を損金経理処分したため、平成二年一一月二〇日、所得金額七八五万六九六九円、納付すべき税額二二四万三九〇〇円と修正申告した。
(二)これに対し、被告は、平成二年一二月七日、過少申告加算税八〇〇〇円の賦課決定をし、さらに、同年一二月二五日、所得金額三九五五万六九六九円、納付すべき税額一四九〇万八〇〇〇円と更正(以下「本件更正」という。)し、過少申告加算税一七八万五〇〇〇円の賦課決定(以下「本件賦課決定」という)をした。
(三)原告は、本件更正のうち所得金額七八五万六九六九円、納付すべき税額二二四万三九〇〇円を超える部分及び本件賦課決定が不服であるので、平成三年二月二六日、国税不服審判所長に対し審査請求をしたが、同所長は、同年一二月一八日に右審査請求を棄却する旨の裁決をした。
3しかし、本件更正のうち、所得金額については七八五万六九六九円、納付すべき税額については二二四万三九〇〇円を超える部分は原告の所得金額を過大に認定したものであって違法であり、従って、これを前提とした本件賦課決定も違法である。
4よって、原告は、被告に対し、本件更正のうち右の限度を超える部分及び本件賦課決定の取り消しを求める。
二請求原因に対する認否
1請求原因1の事実は認める。
2同2(一)の事実のうち、修正申告した理由は否認し、その余は認める。
同2(二)、(三)の各事実は認める。
3同3の事実は争う。
三被告の主張
1被告は、平成元年一〇月二日に死亡退職したAの役員退職給与として原告が損金に算入した三五〇〇万円のうち、三三〇万円を超える三一七〇万円は、法人税法三六条及び同法施行令七二条に規定する過大な役員退職給与に当たるとして、右三一七〇万円を原告の所得金額に加算して本件更正等を行った。
2相当な役員退職給与の額について
(一)法人税法三六条は、法人が各事業年度においてその退職した役員に対して支給する退職給与の額のうち、当該事業年度において損金経理をしなかった金額及び損金経理をした金額で不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない旨定め、これを受けて、同法施行令七二条は、右損金に算入しない金額は、法人が各事業年度においてその退職した役員に対して支給した退職給与の額が、当該役員のその法人の業務に従事した期間、その退職の事情、その法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし、当該役員に対する退職給与として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額とする旨規定している。
右規定の趣旨は、役員に対する退職給与は法人の利益処分たる性質を有している場合があるから、同法施行令七二条の基準によって、職務執行の対価として相当と認められる金額については経費として損金算入を認め、右金額を超える部分については利益処分とみなして損金算人を認めないことにより、適正な課税を行おうとするものである。
(二)相当な退職給与の額の算走方法
相当な退職給与の額の算定方法については、役員に対する退職給与が支給されている他の法人で、判定法人と業種、事業規模及び退職した役員の地位等が類似するもの(以下「比較法人」という。)を選定した上、その平均功績倍率(比較法人の退職した役員の適正(最終)報酬月額に在職年数を乗じ、その数値で退職給与の額を除して得た数値(いわゆる功績倍率)の平均値)に当該役員の適正(最終)報酬月額及び在職年数を乗じて計算する方法が、右規定の趣旨に合致し、合理的である。
(三)比較法人の調査、選定
(1)被告は、前項の算定方法を適用するため、高松、大阪、広島、福岡及び熊本の各国税局管内について、次の基準(以下「本件選定基準」という。)で比較法人の調査を行った(以下「本件調査」という。)。
(1)昭和六三年二月から平成二年一〇月までの間に損金経理により役員退職給与を支給(未払計上を含む。)しているもの
(2)日本標準産業分類(行政管理庁)の分類項目表による大分類I卸売・小売業、飲食店のうち、中分類五〇繊維・機械器具・建築材料等卸売業のうち、小分類五〇五建築材料卸売業のうち、細分類五〇五一木材・竹材卸売業に含まれる事業を営むもの
(3)役員退職給与の支給決議の属する事業年度(以下「基準年度」という。)の直前の年度期末の資本金が一億円未満のもの
(4)基準年度及びその直前事業年度の平均売上金額が二億円を超え、四〇億円以下のものただし、各事業年度の期間が一二か月に満たない場合は、事業年度の期間を一二か月に換算して判断する。
(5)基準年度の直前事業年度期末の決算書の総資産価額が二億円以上のもの(6)青色申告法人で、不服申立て又は訴訟中でないもの
(2)本件選定基準に対応する原告の各状況は次のとおりである。
(1)原告は、別表一のとおり、平成二年三月、Aに係る役員退職給与として三五〇〇万円、弔慰金として五〇〇万円を支払った。
(2)原告の事業種目は、木材卸売業であり、日本標準産業分類では、大分類I、中分類五〇、小分類五〇五、細分類五〇五一木材・竹材卸売業に属する。
(3)原告の資本金額(Aの退職事業年度直前の事業年度)は、二〇〇〇万円である。
(4)昭和六三年四月二日から平成元年三月三一日までの事業年度における原告の売上金額は、三億五四九七万九三五七円、平成元年四月一日から平成二年三月三一日までの事業年度における売上金額は、四億七四一〇万〇七九九円である。
(5)原告の総資産価額(Aの退職事業年度直前の事業年度)は、二億一二一四万六五〇一円である。
(3)本件調査の結果、被告は、本件選定基準に該当すろ合計三一件の報告を受けたが、この中から、同族会社であること、当該退職役員が創業者であること、当該退職役員が死亡により退職したことの三条件に合致する六社を抽出した。
抽出した法人の退職給与の支給状況等は、別表二のとおりである。
(四)本件における相当な退職給与の額の算定
(1)功績倍率
本件調査結果によれば、功績倍率の最高は三・四倍、最低は〇・五六倍で、平均は一・三五倍であるから、本件において、平均功績倍率を一・四倍として計算するのが相当である。
(2)在職年数
法人税法施行令七二条は、「当該役員のその内国法人の業務に従事した期間」と規定しており、役員退職給は判走法人が支出するものであることから、判定法人の業務に従事した期間を功績倍率法を適用する場合の在職年数とすべきであり、Aが原告の役員として在職したのは、昭和六三年四月二日から平成元年一〇月二日までの一年六か月であるから、在職年数は二年とするのが相当である。
(3)最終(適正)報酬月額
Aの最終報酬月額は五万円である。
Aは原告設立から死亡するまで入退院を繰り返しており、常勤して仕入れや金融機関との折衝をしていたとは認めがたく、右金額は同人の原告に対する貢献度、功績を適正に反映したものである。
(4)以上により、平均功績倍率法によって、相当な退職給与の額を計算すると、次の算式のとおり一四万円となる。
(算式)
(最終報酬月額)(在職年数)(功績倍率)(相当な退職給与の額)5万円×2年×1.4=14万円
3弔慰金の額について
法人税法では、弔慰金の相当な額についての取扱いを定めていないが、相続税法基本通達三二〇の取扱いに準じて判断するのが合理的である。
右通達では、被相続人の死亡により相続人その他の者が受ける弔慰金、花輪代、葬祭科等(以下「弔慰金等」という。)については、退職手当金等に該当すると認められるものを除き、被相続人の死亡が業務上の死亡でないときは、普通給与の半年分に相当する金額を弔慰金等に相当する金額として取り扱い、当該金額を超える部分の金額があるときは、その超える部分に相当する金額は退職手当金等に該当するものとして取り扱う旨が規定されている。
これに基づくと、Aの場合、弔慰金の相当な額は、最終報酬月額五万円の六か月分の三〇万円となり、原告が弔慰金として損金経理した五〇〇万円のうち三〇万円を超える四七〇万円については、死亡退職に起因して支給される役員退職給与であると認めるのが相当である。
4生命保険金を原資とする役員退職給与について
役員退職給与の相当な額の算定とその原資とは切り離して考えるべきである。
四被告の主張に対する原告の認否
1被告の主張1の事実は認める。
2同2について、2(一)の法解釈、一般論、功績倍率法を適用することは争わないが、その余の主張は争う。
同2(三)(1)、(3)の各事実は不知、同2(四)(1)、(2)、(4)の主張は争う。
同2(四)(3)のうち、Aの最終報酬月額が五万円であったことは認め、これが適正報酬月額であるとの主張は争う。
3同3、4の主張は争う。
五原告の反論
1被告は、功績倍率法によりAの役員退職給与額を計算するに当たり、在職年数を二年間、最終報酬月額を実際の支払額である五万円と認定した。
しかし、退職給与として相当な金額については、法人税法施行令七二条は、被告の主張2(一)のとおり、三つの基準によって判断すべしと定めているが、「等」という文言が付加されているように、これらの基準のみを機械的に適用して判断するのではなく、これらの基準は例示に過ぎず、その他諸般の事情をも総合的に斟酌して判定すべきである。
2Aは、昭和三三年、個人経営による木材卸売業を開業し、昭和四五年に西崎木材株式会社(以下「西崎木材」という。)を設立し代表取締役に就任した。
同社は、最盛期には年商約一二億円の業績を上げていたが、取引先の橋本製材所の倒産により、昭和五九年一二月連鎖倒産した。
しかし、これは、西崎木材が、その取引先である西部本州木材株式会社(以下「西部本州木材」という。)から依頼されて同社から橋本製材所に納品された木材の代金の支払いについて形式的に関与させられたためであった。
その後、西崎本材他二名が、西部本州木材を提訴し、和解によりA及び妻Bが、同社に対し、一億一〇〇〇万円を支払うことで解決し、また、他の西崎木材に対する債権者に対しては二〇パーセントの配当金を支払って任意整理を終了した。
その後、Aは長男C(商号は新栄木材)名義で西崎木材時代からの取引先と木材取引を継続し、実質的には従来どおり経営に当たった。
昭和六三年四月二日、Cを代表取締役として原告が設立されたが、Aは、永年の業界における実績をもとに、競争の激しい業界において、
「会長」として顧客との接待交際や銀行関係との折衝に当たり、売上も順調に伸ばして行ったもので、単なる法人設立前の準備活動とか、創業者の苦労とかいうレベルを超えるものである。
3西崎木材は、日本生命保険相互会社(以下「日本生命」という。)との間で締結したAを被保険者とする生命保険契約を昭和六〇年四月九日解約し、解約払戻金六五五万五〇四一円を任意整理配当金に充当したが、Cは保険料を支払って右生命保険契約を継続させ、昭和六三年七月一九日には、原告が右保険契約を三三六万円で引き継ぎ、保険契約者、保険金受取人を原告名義に変更し、Aが死亡するまで保険料を支払って来た。
原告が右保険契約を引き継いだのは、Aの死亡による原告の損失を補填するためでもあったが、主にはAの永年の功績を非常に高く評価し、そのため退職金の支給において永年の苦労に報いるためであった。
なお、原告は、Aの死亡に伴ない、日本生命から生命保険金四六七三万二三七一円を受け取った。
4Aの実際の最終報酬月額は五万円であるが、原告が、未だ西崎木材の隆盛時のような売上げ、利益まで回復していないため、当面は生活費のかかる息子Cに月額八二万五〇〇〇円を支払い、生活費のあまりかからない「会長」のAには月五万円しか支払っていなかったものである。
5右のような事情から、Aの個人経営時代から、西崎木材、新栄木材、原告との間には、実質的経営の一体性、継続性が認められ、Aが西崎木材の経営危機を救い、従来からの取引先を原告に引き継がせたのであり、その功績は非常に大きい。
従って、勤続年数は、昭和三三年から平成元年までの三一年間として算定すべきであり、そうでないとしても西崎木材設立からの一九年間を勤続年数として算定すべきであって、原告設立からの二年間とするべきではない。
また、最終報酬月額の認定についても、その役員の会社に対する貢献度、功績を直接考慮する必要があり、前記の事情を考慮せずに功績倍率法を機械的に適用して月五万円と算定すべきではない。
六原告の反論に対する被告の認否
1原告の反論1の事実は争う。
2同2の事実のうち、昭和四五年にAを代表取締役として西崎木材が設立されたこと、同社らと西部本州木材との間に訴訟があり和解が成立したこと、昭和六三年四月二日Cを代表取締役として原告が設立されたことは認め、その余は不知、主張部分は争う。
3同3の事実のうち、原告が昭和六三年七月一九日保険契約を引き継ぎ保険料を支払って来たこと、原告が生命保険金を受領したこと(ただし、金額は五〇六七万七三七一円である)は認め、その余は不知。
4同4の事実は認める。
5同5の事実及び主張は争う。
七被告の再反論
1役員の勤続年数が功績倍率法において重要とされるのは、その中に報酬の後払い的要素と功績評価としての要素が含まれているからであって、前者については、当該法人における役員に在職年数のみを考慮すれば充分であり、後者についても、長期在職者は一般的にいって功績が大きいということであって、そうすると、個人営業時代の勤続年数を、功績倍率法における在職年数に加算して用いることはできない。
原告主張のような事情を考慮するとしても、在職年数においてではなく、比較法人の選定に当たって行うべきである。
原告主張のような計算をすると、比較法人との比較をする以上、同じ比較方式によるべきであるのに、判定法人と比較法人との比較方式が異なることになる。
個人営業時代から引き継いだ当該法人に対する功績は、当該法人における役員報酬等に反映されることを通して、役員退職給与額に影響を及ぼすに過ぎない。
2Aは、昭和六三年四月一日から、平成元年一〇月二日死亡するまで、肝硬変等で香川医科大学医学部附属病院に入退院を頻繁に繰り返していたものであり、原告の事務所に常勤していたとは認め難く、最終報酬月額を五万円と認定しても著しく低額とはいえないし、そうでなくても同人の右報酬月額はせいぜいのところ、同人の最終報酬月額とCの最終報酬月額の合計額の二分の一程度というべきであり、なお百歩譲って、その月額を、Cの役員報酬月額平成元年八月分七五万円と同年九月分九〇万円の平均額八二万五〇〇〇円とするのが相当であるとしても、被告主張の平均功績倍率法及び弔慰金の計算によるときは、その所得金額が四〇五九万六九六九円となり、本件更正の前提とされた所得金額三九五五万六九六九円を超えるものとなる。
第三証拠(省略)

理出

一請求原因1、2のうち客観的な経緯、本件更正、賦課決定の各事実は当事者間に争いがない。
二1本件においては、原告がAの役員退職給与として損金算入した三五〇〇万円のうち三三〇万円を超える三一七〇万円について、被告が法人税法三六条所定の「不相当に高額な部分の金額」に当たると認定して右金額の損金算入を否認し、本件更正及び本件賦課決定をしたことが適法か否かという点が問題となるので、以下この点について判断する。
2相当な役員退職給与の額の算定方法について
本件におけるAの相当な退職給与の額の具体的な算定にあたって、平均功績倍率法を適用することの合理性については当事者間に争いがない。
これによると、判定法人における相当な役員退職給与の額の計算式は、次のとおりになる。
判定法人の相当な役員退職給与の額=適正(最終)報酬月月額×在職年数×平均功績倍率
3本件における功績倍率法の適用について検討する。
(一)成立に争いのない乙第六ないし第一二号証、第一三号証の一ないし三、第一四ないし第二〇号証、第二一号証の一、二、第二二、第二三号証、第二四号証の一、二、第二五ないし第三一号証、第三三号証、第三四号証の一ないし一二、第三五号証の一ないし五、第三六号証の一ないし一三、第三七号証及び弁論の全趣旨によれば、被告が被告主張2(三)のとおりの抽出調査を行い、同(3)のとおりの調査結果を得て比較法人六社を抽出したこと、これら比較法人の退職給与の支給状況、功績倍率等は別表二のとおりであること、右調査結果によると、功績倍率の最高値が三・四倍、最低値が〇・五六倍、平均値が一・三五倍であることが認められ、右認定に反する証拠はない。
(二)本件選定基準に対応する原告の状況について
被告の主張2(三)(2)の事実は、原告において明らかに争わないので自白したものとみなされる。
4本件選定基準が合理的なものであったか否かについて検討する。
(一)被告の主張2(三)(2)(1)の基準(昭和六三年二月から平成二年一〇月までの間に損金経理により役員退職給与を支給しているもの)は、Aが平成元年一〇月二日に死亡し、原告が平成元年四月一日から平成二年三月三一日までの事業年度において原告が役員退職給与を支給し、これを損金経理したこと(当事者間に争いがない)から、合理的であることが明らかである。
(二)同(2)の基準(日本標準産業分類の分類項目表による大分類I卸売・小売業、飲食店のうち、中分類五〇繊維・機械器具・建築材料等卸売業のうち、小分類五〇五建築材料卸売業のうち、細分類五〇五一木材・竹材卸売業に含まれる事業を営むもの)は、前記3(二)のとおり原告の事業種目を同分類である事実に照らし、合理的であるということができる。
(三)(3)ないし(5)の基準(基準年度の直前の年度期末の資本金が一億円未満のもの、基準年度及びその直前事業年度の平均売上金額が二億円を超え、四〇億円以下のもの、基準年度の直前事業年度末の決算書の総資産価額が二億円以上のもの)は、いずれも法人の事業規模を示す指標であり、前記3(二)で認定した原告の事業規模と同程度の事業規模と認められるような範囲の規模と言えるから、合理的であるということができる。
(四)被告の主張2(三)(3)に記載の同族会社であること、当該退職役員が創業者であること、右退職が死亡を理由とするものであることという三条件については、原告が同族会社であり、Aが死亡により退職したことは当事者間に争いがなく、創業者的立場を有することは後記6で認定するとおりであるから、これらの条件は原告と類似する法人を抽出するための基準として合理的であるということができる。
(五)被告主張2(三)(1)(6)の基準(比較法人が青色申告法人で、不服申し立て又は訴訟中でないこと)は、比較法人の退職給与の額が相当とされる場合の比較法人を抽出するために合理的なものといえる。
(六)以上によると、被告の採用した基準は、原告と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似したものを抽出する基準として、前記法令の規定の趣旨に沿うものであるということができる。
5功績倍率について
本件調査結果によれば、功績倍率の最高値が三・四倍、最低値が〇・五六倍、平均値が一・三五であったことは前記二3(一)で認定したとおりであるが、功績倍率を右平均値の小数点第二位を切り上げて一・四倍として計算するのが合理的である。
抽出された比較法人の功績倍率の平均値をもって比較することによって比較法人間に存在する個々の特殊性が捨象され、より平準化された数値が得られることから、平均値を用いることは、前記法令の規定の趣旨に沿い、合理的であるというべきである。
6在職年数について
成立に争いのない乙第四〇号証、原告代表者尋問の結果によれば、Aは、原告設立の日(昭和六三年四月二日)より平成元年一〇月二日まで一年六か月の間原告の役員(取締役)として在職したことが認められる。
ところで、原告は、Aの個人経営時代から、西崎木材、C個人経営の新栄木材、原告の間には、実質的経営の一体性、継続性が認められ、その功績が非常に大きいから、Aの勤続年数を昭和三三年から平成元年までの三一年間、仮にそうでないとしても、西崎木材設立からの一九年間として算定すべきであると主張するのでこの点について検討する。
証人Dの証言、原告代表者尋問の結果、同尋問の結果により真正に成立したことが認められる甲第一一号証の一、二、第一二号証、成立に争いのない甲第一三、第二五号証及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。
Aは、昭和三三年ころ個人経営として木材卸売業を始め、昭和四五年に西崎木材を設立し代表取締役に就任し経営を続け、後記倒産のころには、同社の社員は五名(Aも含む。)、年商は一二億円にまでなっていた。
同社は、昭和五九年、大手取引先である西部本州木材の要請により、同社の従来からの販売先である橋本製材所への販売枠を超えたので、西崎木材が、木材を西部本州木材から仕入れ、橋本製材所に売却するという形態をとったところ、橋本製材所が倒産したため、同年一二月一日、西崎木材が手形の不渡を出して連鎖倒産した。
その後、橋本製材所に売却した木材の代金支払いについては、西崎木材、A及び同人の妻のBが西部本州木材に対し債務不存在確認訴訟を提起したが、同社との間で和解が成立し、A及びBが一億一〇〇〇万円を支払った他、その他の西崎木材に対する債権者に対しては、二〇パーセントの配当金を支払い、最終的には、昭和六〇年六月ころまでに、任意整理を終了した。
Aは、右和解による支払によって、不動産を売却するなど自己の資産の大部分を失った。
Aの意向を受けて長男Cは、昭和六〇年一月ころより新栄木材の商号で木材の卸売業を始めたが、同人は当時三〇歳であり、木材卸売業の経験が浅かったため、Aが仕入れや銀行取引の方法を指導するとともに実際にも担当し、また西崎木材時代の取引先に依頼してこれを引き継がせるとともに、西崎木材の事務所及びその設備もそのまま使用させた。
昭和六三年四月二日原告が設立され、Cが代表取締役に、Aが取締役に就任したが、原告は、新栄木材の個人経営時代(及び西崎木材)の取引先、事務所及びその設備をそのまま引き継ぎ、原告設立時からの年間売上げ総額を四億円に近い線まで確保できた。
以上の事実を認めることができ、右認定を左右するに足る証拠はない。
右認定の事実によると、たしかに、Aは、同人の個人営業の時代や西崎木材のころから、木材卸売業に従事し、最盛期の年商を一二億円くらいにまでにして、相当な功績を上げていたといえるものの、その後西崎木材を倒産させ、最終的にはその責任を負い、以後、Cの個人営業とそれに続く原告設立後の経営の表面からは一歩退かざるを得なかったのであって、少なくともCの個人営業の開始前後の間に、実質的に経営の一体性、継続性があったと認めることは到底困難である。
なお、付言するに、そもそも、同一経営者の功績があって、実質的経営の一体性、継続性がある場合、個人営業の時代の勤続年数を当該法人における在職年数に加算するという原告主張の方法は、次のような問題があるので採用することができない。
法人税法施行令七二条は、「当該役員のその内国法人の業務に従事した期間」と規定し、判定法人の業務に従事した期間に照らして相当性を判断するとしている。
役員退職給与は報酬の後払いという要素と功績評価という要素が含まれるが、判定法人がこれを評価して支出するのであり、右金額のうち判定法人の損金に算入することが相当な金額を計算するために在職期間をその基準とするものである以上、右規定を文言どおり適用するべきである。
また、原告が引き継いだAの個人経営時代、西崎木材、C個人営業の新栄木材におけるAの功績については、通常は、同人の報酬や、原告の事業の規模に表れているということができるから、比較法人の選定に当たり、同種、同程度の事業規模、退職した役員が創業者である事例に限定したり、後記7のように、適正な最終報酬月額を認定することによって評価するほかない。
実際、原告主張のように、法人設立以前の経営期間を在職年数に加算することになると、右設立前の経営期間がそのまま直接原告に対する功績として反映されることになるうえ、平均功績倍率法を前提とする以上、比較法人が法人設立以前の経営期間を在職年数に加算して算定していないから、適切な比較が困難になる。
よって、平均功績倍率法を適用する場合の在職年数は、判定法人の業務に従事した期間とすべきであるところ、Aが取締役として在職した期間は一年六か月であるから、端数月を切り上げて、在職年数を二年とするのが相当である。
7適正報酬月額について
Aの最終報酬月額が五万円であったことは当事者間に争いがない。
ところで、前掲原告代表者尋問の結果、甲第二五号証、成立に争いのない甲第一号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一五号証、調査嘱託の結果及び弁論の全趣旨によると、以下の事実を認めることができる。
西崎木材が倒産する直前の事業年度のAの報酬は月六八万円(年八一六万円)であり、昭和六〇年からCが個人営業していたころのAの報酬は月約四〇万円であった。
原告におけるAの報酬は同人の意見に従い年額六〇万円(月額で計算すると五万円となる)と定められたが、同人は生活費としてCから月四〇万円程度を受領していた。
原告設立後原告代表取締役Cの報酬が月七五万円、取締役でCの弟Eの報酬が月六〇万円と定められ、その後平成元年九月一日、役員の報酬が改定され、原告代表者Cが月九〇万円、Eが月七五万円になったが、Aの報酬は変更されなかった。
Aは、肝硬変症、肝細胞癌により、原告設立日の前日である昭和六三年四月一日から同年六月三日までの約二か月間及び同年九月二九口から一〇月一九日までの二一日間、平成元年二月一四日から三月二四日までの四〇日間、七月一七日から八月七日までの二二日間、九月二日から一〇月二日までの一か月間香川医科大学医学部附属病院にそれぞれ入院し、退院中も月二日ないし四日程通院していたが、右一〇月二日同病により死亡した。
Aは、退院中は、仕入先や銀行と交渉したり、原告代表取締役を指導する等原告の業務に従事していた。
以上の事実を認めることができ、この認定に反する原告代表者の供述部分は採用しない。
これらの事実に前記6で認定した西崎木材時代からの取引先やAの事業経験を原告に引き継がせたことを合わせ考慮すると、Aの役員報酬月額五万円はAの功績を適正に反映したものとしては低額に過ぎ、Aの適正報酬月額は、
原告代表者Cの報酬月額平成元年八月分七五万円と同年九月分九〇万円の平均額八二万五〇〇〇円の二分の一の額の四一万二五〇〇円と認めるのが相当である。
8生命保険金を原資としたことについて
原告は、Aを被保険者とする生命保険契約を引継ぎ、同人死亡後右保険金を受け取ったこと、右保険金よりAの遺族に対して退職給与を支払ったことは当事者間に争いがない。
原告は、役員退職給与の相当額の算定に当たり、右保険金を退職金の原資としたことを考慮すべきである旨主張するが、利益金としての保険金収入と、損金としての退職給与金の支給とは、それぞれ別個に考えるべきものであり、会社が役員を被保険者とする生命保険契約を締結するのは、永年勤続の後に退職する役員に退職給与金を支給する必要を充足するためのほか、役員の死亡による経営上の損失を補填するためであるというべきであるから、会社が取得した保険金中、当該役員の退職給与の相当な額より多額であると認められる部分は、役員の死亡により会社の受ける経営上の損失の補填のために会社に留保されなければならないというべきである。
したがって、保険金を原資としたことを役員退職給与の相当額算定の資料として考慮しなかった被告の算定方法が不合理であるとは言えない。
9以上より、平均功績倍率法によって、相当な退職給与の額を計算すると、次の算式のとおり一一五万五〇〇〇円となる。
(算式)
(最終(適性)報酬月額)(在職年数)(功績倍率)(相当な退職給与の額)
41万2500円×2年×1.4=115万5000円
三相当な弔慰金の額について
弔慰金名目で支払われるもののうち、社会通念上遺族に対する純然なる弔意の趣旨で支給されるものと認められる額については弔慰金として取り扱い、これを超える部分は、死亡退職に起因して支給される役員退職給与であると認めるのが相当である。
法人税法では、その基準についての取扱いを特に定めていないが、相続税課税上は、被相続人の死亡が業務上の死亡であるときは、当該被相続人の死亡当時における賞与以外の普通給与の三年分に相当する金額、業務上の死亡でないときは、右普通給与の半年分に相当する金額を弔慰金に相当する金額として取り扱い、右金額を越える部分を退職手当金等に該当するものとして取り扱われている(相続税法基本通達三二〇)が、本件の場合も、
右取扱いに準じて判断するのが合理的である。
これに基づくと、前記二7で認定したとおりAは肝硬変、肝細胞癌により死亡しており、同人の死亡は業務上の死亡でないから、弔慰金の相当な額は、前記二7で認定したAの適正な報酬月額四一万二五〇〇円の六か月分の二四七万五〇〇〇円となる。
そうすると、原告が弔慰金として損金経理した五〇〇万円のうち二四七万五〇〇〇円を超える二五二万五〇〇〇円については、死亡退職に起因して支給される役員退職給与であると認めるのが相当である。
四したがって、所帯金額は、修正申告にかかる七八五万六九六九円に、役員退職給与の損金不算入額三六三七万円(役員退職給与として支給された三五〇〇万円と弔慰金相当額を超える二五二万五〇〇〇円の合計額三七五二万五〇〇〇円から相当な役員退職給与額一一五万五〇〇〇円を控除した金額)を加算した四四二二万六九六九円というべきであるから、本件更正は、右金額の範囲内でなされているので適法であり、これを前提としてなされた本件賦課決定もまた適法であるというべきである。
五以上のとおり、本件更正及び本件賦課決定に違法はないから、原告の本訴請求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

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